『ドラッグは世界をいかに変えたか/依存性物質の社会史)デイヴィッド・T・コートライト[春秋社]』
この本では、合法であるタバコも酒も、立派なドラッグであると書いてある。因みに、コーヒーなどに含まれるカフェインも、ドラッグだそうだ。
タバコの発見から全世界的に流通するまでの歴史がとても詳しく書いてある。もちろん、タバコだけではなくて、他のドラッグ(アルコール、大麻、コカ、モルヒネ)についても、詳述されている。
タバコのドラッグ性については、ここで書き出すと終わらないので、ひとつだけ、この本から、おもしろい話を紹介してみよう。
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ある夏の夕暮れ。ロンドンのハムステッドヒースを散歩していた二人のエッセイスト。ウイリアムとチャールズ。
二人は歩きながら、お互いに嗅ぎタバコをやめようという話になった。「よし!」と、決意を固め、その勢いで二人はタバコ入れを丘の上からイバラのやぶの中へ投げ捨てた。
だが、ウィリアムは、だんだんと惨めな気分になって来て、一晩中不愉快だった。そして、翌朝、同じ丘へと向かった。そこには、下のやぶの中をガサゴソ探し回っているチャールズがいた。
チャールズはウィリアムを見上げて、
「何だ、君もタバコ入れを探しに来たのか」
ウィリアムはチョッキのポケットからタバコをひとつまみ取り出しながら、
「とんでもない!朝一番に開いている店に言って半ペニー分買ってきた」
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何度も禁煙にチャレンジして失敗した私には、この短いが含蓄のある話が、この本の中では一番光っていた。
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